あたし彼女読んだ

第3回日本ケータイ小説大賞:あたし彼女

…上手い。
それが読み終わって一番最初に出てきた言葉だったよ。
この語彙、言葉選び、行間、空白、まさに「ケータイ小説」だと思った。ケータイで読まれることを考え尽くしたもの。
奇跡の作品じゃないかなぁ。書いた本人すらもう二度と書けない名作だと思う。

あの文体と、最初の5ページくらいまででかなり痛いキャラ設定をつきつけられるので、読み始めるとそのあたりで挫折する人も多いだろうが、そこさえ超えれば、そういう味だと思って読んでいけば読める。どんな書き方であれ日本語だしなぁ。
ある意味で生きた日本語(わらい
「アルジャーノンに花束を」だと思って読めばいいよ(わらい
いや、まぁ実際、これ読むのぜんぜん普通によめたか、というとかなりつらいものがあったけども!!
だってねぇ、認めたくないけどワシもう30目前に迫ってるのよねー。
最初の5ページを超えて読み進めていけば、露骨ながら演出する努力が見えてくるので、それにノってあげるとかなり楽しく最後まで読み勧められる。
と思う…。

ストーリーは、セックスと男と妊娠と中絶と、見事に典型的なケータイ小説。
でもベタだからこその良さがある。わかりやすさもある。
登場人物なんて主人公のアキ、彼氏のトモ、そのお互いの両親しか出てこない。
あの書き捨てるような口語文で、きっちりと話が進んでいく、その構成は本当に上手い、と唸った。
小道具の使い方も典型的で上手いんだよ。
上着、ブレスレット、ココア、枕。あとは刺された傷と悪夢とかそのくだり。

話がベタだっていうのは、批判にならないと思うんだよなぁ。
よくできたお話こそ、ベタで出来てると思う。
それをどう味付けしていくかでその作品の善し悪しが分かれるから。
「あたし彼女」は上手く料理したと思う。
「ケータイ小説」っていう媒体で最高におもしろくなる形に仕上がってると思う。

ほんとさ、ケータイの画面で読んでみたら、この改行と空間、ページ送りがおもしろいんだよこれが。
改行で間を取るなんて本当に典型的な演出方法だけど、ケータイで読まれることを考えてなかなかうまく作ってあると思う。
改行でブツブツ切れる言葉を読みにくいというか味があるというか。
「読みにくい」で切って捨てるのはカンタンだぜー。
つか、どんな物語でもアニメでもゲームでも小説でもマンガでもなんでも、自分から前のめりにいくほうが色々楽しめていいと思うんだけどなぁ。
「物語にひきずりこまれました」っていうのが理想ではあるけども、ひきずりこまれなかったものを全部ダメだとまとめてしまうのはもったいないなぁと思う。

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